<遺留分を巡り不動産評価でもめ事に:相続準備の大切さ>

親と同居の長男のため、親が実家を長男に相続させる遺言書を作成し、相続の後に弟や妹が遺留分を要求する事例は避けることができないとも言えます。

できれば「実家を長男が相続し、遺留分相当額のお金を弟や妹に相続させる」遺言書が望ましいのですが、お金が少ない家庭で、主だった資産が実家だけの場合、「実家を長男に相続させる」という遺言書にならざるを得ず、弟や妹が遺留分を要求する事態へ進むことになります。

当方でご相談を受けた同様の事例では、「遺留分の金額」が問題となりました。弟や妹は実家の評価額に法定相続割合の50%を乗じた額の金銭を遺留分として要求できます。

しかし、実家の評価額と言っても「固定資産税評価額」<「相続税路線価」<「公示価格」≒「実売価格」など様々な評価方法があり、一概にいくらとは断定できないため、相続人間で「いくらを評価額とするか」話し合いをすることになりますが、これはなかなか意見の一致するものではありません。

長男側とすれば「固定資産税評価額」の評価額が一番低いため、この金額を基準に遺留分額の合意ができれば望ましいと言えますし、弟や妹としては「公示価格」や「実売価格」の方が高額のため、これらの高い金額の方が有利となり、金銭面だけではなかなか合意しにくいのです。

結局、当事者間の任意の話し合いでは合意とならず、家庭裁判所の調停になりました。

合意が進まない場合、家庭裁判所で遺留分侵害額の請求調停という手続きを行い、裁判所の判断により遺留分額を決定することができるのです。

調停では、まず、家庭裁判所の調停室で相続人による話し合いがされます。しかし、調停での合意が成立しない場合、最終的には不動産鑑定士による鑑定評価により評価額が決定され、審判(判決)により遺留分額が決定ますが、高額(一般的に100万前後)の鑑定費用がかかり、遺留分を請求する弟や妹にも高額の負担が発生します。

この件も調停の当初はなかなか合意ができなかたのですが、調停室での話し合いが進むにつれて、高額の鑑定費用の負担がネックとなったため、複数の不動産会社の査定書を相続人間で収集し、その中で妥協できる査定金額を見つけて遺留分を計算し、調停の場で合意が成立して解決に至りました。

そのようなことの無いように、長男に自宅を相続させる際は、弟や妹に遺留分相当額の財産を相続させるようにお金を準備しておく、更には遺言書で自宅は長男、遺留分相当額の財産は弟や妹に指定しておくことが望ましいと言えますし、もし、そのような財産が無い場合は、長男は遺留分の支払いを想定してあらかじめ不動産会社に査定書を取るなどして支払うべき金額の想定をしておく必要があると言えます。

そのような相続準備のご相談は、ノウハウ豊富なしあわせ遺産相続の専門家までお気軽にご相談ください。

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