特別養子縁組制度の改正

特別養子縁組制度(昭和62年民法改正により導入)
・専ら養子となる子の利益を図るための制度で、家庭に恵まれない子に温かい家庭を与えて、その健全な育成を図ることが目的。
・特別養子縁組が成立すると実父母との親子関係が終了する点や、則として離縁をすることができない点で、普通養子縁組とは異なります。

特別養子縁組は、実の親と暮らせない子どもと養親の間で縁組をする制度で、1988年に導入されました。
制度を見直すための改正民法が2019年6月に国会で成立し、制度導入以降で初めての見直しが決まりました。
今回の改正では、特別養子制度の利用を促進するために、特別養子縁組における養子となる者の年齢の上限を原則6歳未満から原則15歳未満に引き上げるとともに、特別養子縁組の成立の手続を二段階に分けて養親となる者の負担を軽減するなどの改正をしています。

今回の改正は、令和2年4月1日から施行されます。

普通養子縁組との違いと、改正ポイントをご紹介いたします。

<普通養子縁組>
対象者
養親:成年に達した者
養子:養親の尊属でない者又は養親より年長者でない者

主な要件
①家庭裁判所の許可
② 養親となる者に配偶者がいる場合には夫婦で縁組すること
【以上は養子となる者が未成年者の場合】
③縁組の届出

効果
養子と実方との親族関係は終了しない(子が未成年の場合には,養親が親権を行使する)
養子の戸籍には実父母に加えて養父母が記載される。

成立件数
8万件弱(平成28年度戸籍統計)※ 成年養子も含む件数。

<特別養子縁組>
対象者
養親:夫婦(一方が25歳以上,他方は20歳以上)
養子:6歳未満の者(6歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合には8歳未満まで可)

主な要件
① 原則として養子となる者の実父母の同意
② 実父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認められること
③ 養親となる者の6か月間以上の試験養育
④ 家庭裁判所の審判

効果
養子と実方との親族関係は終了する
養子の戸籍には,「父」「母」として養親が記載される

成立件数
約500件(平成28年度司法統計)※例年500件前後で推移。

<改正ポイント>
対象年齢の引き上げ
従来は子どもの年齢を原則6歳未満(例外的に8歳未満)に制限されていましたが、制度が活用しにくくなっていると指摘されていました。

今回の改正で、年齢を原則15歳未満(例外的に17歳未満)に引き上げ、対象を拡大します。

15歳以上17歳未満の子どもについては、(1)本人の同意がある、(2)15歳未満の時から養父母となる人が養育している、(3)やむを得ない事情で15歳までに申し立てができなかった、という条件を満たせば、特別養子縁組を認めるということです。

縁組の審判確定時点で18歳に達している人は、改正後も特別養子縁組をすることができません。普通養子縁組が選択肢になります。

手続きの2段階化
特別養子縁組の成立には、子どもの実親の同意が必要です。
さらに、「実親による養育が著しく困難又は不適当であること」などを家庭裁判所で審理する必要があります。

従来は、長い審理期間の間に実親が一旦同意していても、審判が確定するまでに同意が撤回されると、縁組ができない仕組みになっていました。
また、審判が出る前に6ヶ月以上の試験養育の期間をとる必要があります。
養親側にとっては、審判の行方が分からないまま試験養育に踏み切るというリスクの高い仕組みになっていました。

問題の解消を図るため、今回の改正により、審判が次の2段階に分けられます。
第1段階:適格性確認(実親が育てることができるかどうかを判断する段階)
第2段階:縁組成立(養親の適格性だけを対象にして判断を行う段階)

実親は第1段階の手続きで縁組に同意した場合、2週間経過した後は撤回ができなくなります。
また、試験養育は第1段階の審判が出た後に行うことになります。
2つの段階を同時に審判することも可能で、手続きの長期化を防ぐとしています。

児童相談所の関与
従来、特別養子縁組の申し立ては養親側が自ら行う必要があり、負担になっていました。

今回の改正で、児童相談所長が第1段階の手続きの申し立てを行ったり、審理に参加して実親の養育状況を立証したりできるようになります。

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