安楽死と尊厳死

安楽死及び尊厳死とはどのようなことを言い、日本で認められているのでしょうか。

安楽死

回復の見込みがなく、苦痛の激しい末期の傷病者に対して、本人の意思に基づき、薬物を投与するなどして人為的に死を迎えさせることをいいます。

日本では法的には認められていません。横浜地方裁判所の東海大学安楽死事件(1991年)に対する判決(1995年)においては、

(1)患者に耐えがたい激しい肉体的苦痛があること

(2)患者は死が避けられず、その死期が迫っていること

(3)患者の肉体的苦痛を除去・緩和するために方法を尽くし、代替手段がないこと

(4)患者自身による、安楽死を望む意思表示があること

の4要件を満たせば、安楽死が認められる(違法ではない)とされたが、これまで認められた例はありません。積極的安楽死とも呼ばれます。

尊厳死

回復の見込みがない傷病者に対して、本人のリヴィング・ウィル(生前の意思)に基づき、人工呼吸器や点滴などの生命維持装置を外し、人工的な延命措置を中止して、寿命が尽きたときに自然な死を迎えさせることをいいます。

植物状態におちいるなどしたとき、人工的な延命措置によって生命を維持し続けることは、人間としての尊厳を保っていないと本人が考えた場合、人工的な延命措置を行わずに自然な死を選ぶ権利があるとする考え方にもとづきます。QOL(生命の質)を重視する流れから、この権利が求められるようになりました。消極的安楽死とも呼ばれます。

上記のように患者が「死なせてほしい」などの意思を持っていることが明らかな場合でも、医師が積極的な医療行為で患者を死なせることを安楽死と呼びます。安楽死を認めている国や州がありますが、日本では安楽死は認められておらず、日本で患者を安楽死させた事件では、いずれも医師の有罪判決が確定しています。

日本の国内法での取り扱いは以下のようになっています。

積極的安楽死は、刑法第202条で嘱託(同意)殺人罪となります(「人を教唆し若しくは幇助して自殺させ,又は人をその嘱託を受け若しくはその承諾を得て殺した者は,6月以上7年以下の懲役又は禁錮に処する」。ただし,罰金刑はありません)。

また、患者本人の明確な意思表示に基づく消極的安楽死は、刑法199条の殺人罪、刑法202条の殺人幇助罪・承諾殺人罪にはならず、完全に本人の自由意思で決定・実施できるとされています。

日本の国内法では、一般的に他人(一般的には医師)が行う場合は下記の条件のいずれかを満たす場合に容認される(違法性を阻却され刑事責任の対象にならない)。

・患者本人の明確な意思表示がある(意思表示能力を喪失する以前の自筆署名文書による事前意思表示も含む)。

・患者本人が事前意思表示なしに意思表示不可能な場合は、患者の親・子・配偶者などの最も親等が近い家族(より親等が遠い家族や親戚は親等が近い家族に代わって代理権行使できない)の明確な意思表示がある。

日本では、患者本人の明確な意思表示に基づかず、患者本人が事前意思表示なしに意思表示不可能な場合は、患者の親・子・配偶者などの最も親等が近い家族の明確な意思表示にも基づかず、他人(一般的には医師)が治療の中止をした場合は、刑法199条の殺人罪が成り立つ。患者本人の明確な意思表示に基づかずに、または、家族の明確な意思表示に基づかずに、治療を開始しなかった場合も、殺人罪または保護責任者遺棄致死罪が成り立つ。(出典:Wikipedia)

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