世の中に増え続ける「誹謗中傷」について

コロナウイルスの影響により、休日も家で過ごすことが多くなりインターネットやSNSを利用される機会が多くなられた方も多いのではないでしょうか。

今回はインターネットやSNSの身近な普及により急増し近年問題化されている
『誹謗中傷』についてお話させていただきます。

個人にとどまらず、企業から個人事業まで被害報告が多くみられる『誹謗中傷』

顔の見えないやり取りをいいことに、ネット上で誹謗中傷をする方は匿名と誤解しているケースが少なくありませんが、発信元は特定できるうえ、悪質な書き込みは罪を問うことも可能です。

SNSなどで誹謗中傷の被害にあったときは、削除対応するだけでなく、我慢せずに法的措置を検討するなど、毅然(きぜん)とした対応することが重要でしょう。

◇そもそも誹謗中傷とはどんな意味?

根拠のない悪口を言いふらして他人の名誉を損なう行いのことである。

密な意味は異なるが、どちらも悪意を持って他人攻撃する行為である点は共通しており、類語の関係に位置づけられる。

◇誹謗中傷で科される刑罰

誹謗中傷により、被害者の実生活になんらかの悪影響を生じさせてしまうと、以下の罪に問われ逮捕されてしまう可能性があります(ただ、侮辱罪で逮捕される可能性は極めて低いのが実情です。)。

名誉棄損罪
名誉棄損罪(めいよきそんざい)とは、「あいつは元犯罪者だ」など公然の場で事実を公表してその人の名誉を傷つける発言をした際に適用される刑罰です。

公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第二百三十条

侮辱罪
侮辱罪(ぶじょくざい)とは、人を馬鹿にして辱める行為を公然の場で行った際に適用される刑罰です。

事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、拘留又は科料に処する。

引用:刑法第二百三十一条

信用棄損罪
信用棄損罪(しんようきそんざい)とは、「あの店のパンに虫が挟まっていた」など嘘の情報を流して他者の信用を落とした際に適用される刑罰です。正当な理由と根拠もなくこのような誹謗中傷をした場合は信用棄損罪として扱われます。

虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害した者は、三年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。

引用:刑法第二百三十三条

◇表現の自由と名誉権のどちらが優先されるの?

表現の自由と名誉権は、両方とも憲法で保障された権利です。では、これらがぶつかったときは、どちらが優先されるのでしょうか。

・自由が生み出すネットの誹謗中傷
インターネットを使って誰もが気軽に発信できるようになった現代社会では、「あらゆる言論・表現が保証される」という中で、他人を誹謗中傷するような表現が横行し問題となっています。

・表現の自由は権力に対する国民の権利
言論・表現の自由が保障されているといっても、これを掲げていれば何でも許されるというわけではありません。もともと憲法による「表現の自由」とは、政府の権力に制限を加えることで国民の基本的権利を保障するものです。

・社会的害悪のある表現は取り締まられる
「あらゆる言論・表現に自由を保障する」という原理を表面的にとらえると、社会的に害悪があると考えられる言論であっても自由に発言して良いことになり、「表現の自由」とは本質的に反社会的な要素を併せ持つことになります。それゆえ逆に、ある種の言論・表現については、社会的害悪があるものとして当然抑制しても良いものと考えられていました。

・他人を傷つける表現の自由は保障されていない
人権の行使は、他人の生命や健康を害したり、人間としての尊厳を傷付けたりしない方法によるものでないといけません。「表現」という行為は他者との関わりを前提としたものです。それゆえ、表現の自由は他人の利益や権利との関係で、制約が生じることになります。

・ネット上での誹謗中傷の自由は許されていない
私人である国民個人どうしの関係において、憲法が保障する言論・表現の自由は直接には作用するものではありません。ネット上で特定の個人や法人を指して名誉を傷付けたりプライバシーを侵害したりする書き込みが行われるのは個人間の関係における表現となるので、基本的には表現の自由を保障される範疇には入っていないことになります。

・何でも表現して良いわけではない
つまり、犯罪として禁止されているワイセツ表現や名誉毀損的表現については、憲法の保護を受けられない表現というわけです。表現の自由が保障されているからといって、どんな表現でも許されるわけではないことを、ネットのユーザーは肝に銘じておく必要があります。

◇もしも自分や周りが被害者になってしまった時の3ステップ

ステップ①誹謗中傷の証拠を保存する
誹謗中傷の書き込みをスクリーンショットなどで保存します。
後に告訴や損害賠償請求をしたりするときに必要となります。

ステップ②削除要請をする
誹謗中傷の書き込みの削除要請をします。
サイト管理者、サーバー会社、プロバイダ会社、ドメインの登録代行業者、サイトを管理している企業などがあります。
どこに書き込まれたかで、どこに連絡すればスムーズに削除できるかは変わります。
削除申請フォームがあれば、そこから連絡しましょう。

なお、法的措置を取るなどちらつかせることで削除される可能性は高まりますが、削除にスムーズに応じてくれない場合も少なくないです。

法務省の人権擁護相談窓口に相談すれば、削除要請をしてもらえます。
しかし、削除を拒否される場合もありますし、法的権限がないので法的手続は非対応です。

▼法務省:人権擁護局フロントページ
http://www.moj.go.jp/JINKEN/index.html
しかし、誹謗中傷が削除されなかった場合など自力で解決できない場合や、発信者情報開示請求や損害賠償請求など法的措置を取りたい場合はステップ3に進みます。

ステップ③弁護士に依頼する
最終手段は弁護士です。

ただ、弁護士なら誰でもいいわけではありません。削除請求や発信者情報開示の仮処分の申し立てや、損害賠償請求、刑事告訴などの法的措置を取る必要があるので、ネットやSNSの削除要請などの案件に強い弁護士に依頼されることをおすすめします。

以上、今回は誹謗中傷についてお話させていただきました。

悲しいことに世の中から犯罪がなくならないのと同じように、インターネットを利用した誹謗中傷もそう簡単にはなくなりません。

ですが一人ひとり意見を持ち、発信することは悪いことではありません。
そういった身近な意見により、良くなることもたくさんあると思います。

ただ少し、相手を目の前にいる『たった一人の人間』として、その人もきっと誰かの大事な人だと、少しでも思いやりを持ち意見を述べることをすれば、より良い環境を築けるのではないでしょうか。

一人一人の思いやりは世の中を変える力が大いにあると信じています。

戻る