補助・保佐・後見制度の概要・制度の違い

成年(任意)後見制度には、本人の判断能力の程度に応じて、「後見」「保佐」「補助」の3つの制度が用意されています。「後見」「保佐」「補助」の主な違いは次の表のとおりです。

 後見        補佐補助
対象となる方判断能力が欠けているのが通常の状態の方判断能力が著しく不十分な方判断能力が不十分な方
成年後見人等の同意が必要な行為(同意権)同意権なし民法13条1項所定の行為(借金,訴訟行為,相続の承認・放棄,新築・改築・増築などの行為)※申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」(民法13条1項所定の行為の一部)
取消しが可能な行為(取消権)日常生活に関する行為以外の行為同上同上
成年後見人等に与えられる代理権の範囲(代理権)財産に関するすべての法律行為申立ての範囲内で家庭裁判所が審判で定める「特定の法律行為」同左

※ 民法13条1項に定める行為

(1)貸金の元本の返済を受けること。
(2)金銭を借り入れたり、保証人になること。
(3)不動産をはじめとする重要な財産について、手に入れたり、手放したりすること。
(4)民事訴訟で原告となる訴訟行為をすること。
(5)贈与すること、和解・仲裁契約をすること。
(6)相続の承認・放棄をしたり、遺産分割をすること。
(7)贈与・遺贈を拒絶したり、不利な条件がついた贈与や遺贈を受けること。
(8)新築・改築・増築や大修繕をすること。
(9)一定の期間を超える賃貸借契約をすること。

☆「後見」制度とは

精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が欠けているのが通常の状態にある方を保護・支援するための制度です。
この制度を利用すると、家庭裁判所が選任した成年後見人が本人の利益を考えながら、本人を代理して契約などの法律行為をしたり、本人または成年後見人が、本人がした不利益な法律行為を後から取り消すことができます。
ただし、成年後見人には同意権が与えられていません。後見が始まると、本人の代わりに全ての法律行為を後見人が行うことになります。そのため後見人には同意権が与えられていないのです。

☆「保佐」制度とは

精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力が著しく不十分な方を保護・支援するための制度です。
この制度を利用すると、お金を借りたり、保証人となったり、不動産を売買するなど法律で定められた一定の行為について、家庭裁判所が選任した保佐人の同意を得ることが必要になります。保佐人の同意を得ないでした行為については、本人または保佐人が後から取り消すことができます。
ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、保佐人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。
また、家庭裁判所の審判によって、保佐人の同意権・取消権の範囲を広げたり、特定の法律行為について保佐人に代理権を与えることもできます。

☆「補助」制度とは

軽度の精神上の障害(認知症・知的障害・精神障害など)により、判断能力の不十分な方を保護・支援するための制度です。この制度を利用すると、家庭裁判所の審判によって、特定の法律行為について、家庭裁判所が選任した補助人に同意権・取消権や代理権を与えることができます。
ただし、自己決定の尊重の観点から、日用品(食料品や衣料品等)の購入など「日常生活に関する行為」については、補助人の同意は必要なく、取消しの対象にもなりません。

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